30代になった社会福祉士・しげKickのブログ

昭和60年生まれ社会福祉士のしげkickです。福祉や医療関係、その他ゆるく書いていきます。

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【社会福祉士試験対策その4】ロールズの「正義」について、簡単に説明してみた。

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はじめに

社会福祉士を学ぶとき、よく出る「正義」という言葉。

 

意味はなんとなく分かりますが、

2018年の第30回社会福祉士試験で取り上げられました。

 

その問題がこちら

問題22 ロールズ(Rawls, J.)が論じた「正義」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1 つ選びなさい。


1 成員の快楽の総和を最大化する社会が,最も望ましいと論じた。


2 社会で最も不遇な人の最大の便益となるように,資源配分の是正が行われるべきであると論じた。


3 諸個人に対する平等な基本的自由の実現が不可能であることを前提に,正義を論じた。


4 「無知のヴェール」に包まれた個人を想定した議論では,功利主義的な社会が構想されることになると論じた。


5 「さまざまな生き方」を選べる基本的なケイパビリティを平等に配分することが,正義であると論じた。 

 

答え:2(第30回 社会福祉士国家試験 試験問題より引用)

 

恥ずかしながら、ジョン・ロールズの「正義」は初耳でしたが・・・

調べてみると良問だったので、できるだけ簡単に解説してみます。

 

ジョン・ロールズとその時代背景について

ジョン・ロールズは1950年代から60年代に

かけてアメリカで活躍した『正義論』で有名な学者です。

 

ロールズが台頭する前のアメリカは

「成員の快楽の総和を最大化」という功利主義

基本となる社会でした。

 

この「成員の快楽の総和を最大化する」とは

できるだけ多数の人が最大の幸福(=快楽)を得られることを指します。

 

つまり、個々の行為がどれだけ幸福をもたらすのか、

平均点を出し、より高得点であるものが「正義」という考えです。

 

しかし、この発想は、多数が幸せになるのなら、

少数の人が犠牲になる可能性も含まれています。

 

1950年~60年代のアメリカは白人男性が優位とされ、

黒人や女性が犠牲になって成立している社会ではないかと

問題提起される時代でもありました。

 

その中で、ロールズはこのような

功利主義的ではなく、諸個人に対する平等な

基本的自由の実現が可能であることを前提に正義を論じます。

 

ロールズの正義とは 

ロールズの「正義」は極端に言うと、

「みんなが公平だと合意できるルール」です。

 

例えば、憲法が国民の意志をまとめたルールであるように、

「公正さ」がポイントになります。

 

しかし、公平なルールは多数決で決めるものではありません。

 

みんなが持つ「正義感覚」をすり合わせて、

誰もが納得できるルール(=正義)を形成し、

その枠の中で、自分なりの幸福を自由に選択できるのが、

ロールズにおける正義の特徴になります。

 

また、ロールズは

憲法のような基本的な人権のルールだけでなく、

社会的・経済的な不平等において、

許容できる範囲も決めておくべきだと主張しています。

 

つまり、自分が社会的、経済的な不平等にあったとして、

もし相手が自分の立場になってみた時、

耐えることができなければ、ルールを変えるべきという発想です。

 

そして、許容できる社会的、経済的な不平等の範囲を決める条件として、

社会で最も不遇な人の最大の便益となるように、

資源配分の是正が行われるべきであると論じました。

 

正義の枠の中で、自由に自分のやり方で幸福を追求しても、

資源は限られているため、必ず相手との格差は生まれてしまいます。 

 

もし、社会的・経済的に力を持つ人だけが得をして、

もっとも不利な立場のいる人たちは何の恩恵もなければ、

フェアではありません。

 

だから、社会的に立場が有利な人が得た利益を、

弱者に配分されるシステムが必要だと考えたのです

 

無知のヴェールとは

 

最も不遇な人の最大の便益となるルールは、

とても弱い立場にいる人にとって、ありがたいものです。

 

しかしその一方、社会的・経済的に力を持つ人にとっては、

自分の利益が減る可能性があり、

このルールを受け入れることは難しくもあります。

 

では、どうすれば皆が最も不遇な人の最大の便益となるルール

同意してくれるのでしょうか。

 

その答えが「無知のヴェール」という考えです。

 

無知のヴェールとは、文字通り「無知」になること。

つまり、現在、自分が持っている全てのステータス、資産、能力などを忘れて、

空っぽの状態にすることです。

 

この「無知のヴェール」に包まれた個人は、

功利主義的な社会ではなく、最も不遇な人の視点に立って、

社会を構築しようとするとロールズは論じました。

 

最後に

ロールズの「正義」について、簡単に説明してみました。

 

正直、内容が複雑すぎてまとめるのが難しかったので、

うまく伝わっていなかったらすみません。

 

でも、絶対に社会福祉士を目指す人はロールズの正義を

勉強した方がいいです。正義とは何か、ロールズの考えに

触れた時、今までみていた世界が変わるほどのインパクトはあります。

 

もし興味がある方は『集中講義!アメリカ現代思想』

読んでみて下さい。

 

ジョン・ロールズの「正義」について、

当時の歴史背景も踏まえて、わかりやすく丁寧に説明していますよ。