30代になった社会福祉士・しげKickのブログ

昭和60年生まれ社会福祉士のしげkickです。福祉や医療関係、その他ゆるく書いていきます。

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成年後見制度とは何か、その背景と課題について簡単にまとめてみた

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認知症患者が持っている金融財産はどれくらいか

みなさんご存知でしょうか?

 

第一生命経済研究所の試算では、

2017年末で143兆円に上り、

2030年度時点では215兆円に達するとのこと・・・

 

国内にある家計金融資産の1割近くを、

認知症患者が所有する状況になりつつあります。

 

そして、厚労省のデータによると、

2012年時点の認知症患者数は約462万人

軽度の認知症(MCI)約400万人を含めると

約900万人に上る勢いです。

 

今後も高齢化が進み、認知機能低下によって

財産管理ができない人が増加が予想されます。

 

そうなれば、オレオレ詐欺、マルチ商法などの犯罪に

簡単に巻き込まれ、財産を失う危険も増えるでしょう。

 

そうした認知症高齢者などの金融資産を守るために、

成年後見制度という制度があります。

 

今回は「成年後見制度」について、

その背景と課題についてまとめてみました。

 

きっかけは2000年の介護保険制度

 

成年後見制度が誕生したのは、

2000年の介護保険制度がスタートしたときです。

 

この介護保険制度によって、

介護サービスにおいて、措置制度から契約制度へ変わりました。

 

措置と契約とは何でしょうか。

 

措置制度だった時代は、行政が利用者の希望しているサービスの利用可否や、

その人が実際に利用すべきサービスを決定していました。

 

その負担もすべて税金で賄っています。

 

しかし、高齢化率の上昇により、措置制度では財源確保が難しくなり、

40歳以上の人から保険料を徴収して運用する介護保険制度に切り替わります。

 

そして、今まで行政によって自由にサービスを選べなかった

措置制度とは異なり、介護保険制度では利用する介護サービスを

利用者本人から決める契約制度に変わりました。

 

しかし、判断能力が不十分な認知症の人にとって、

自分の意志で介護サービスを決めることは非常に困難です。

 

そんな認知症高齢者の契約をサポートするために

介護保険制度と同年、2000年に成年後見制度が設けられました。

 

成年後見制度とは、その課題について

 

成年後見制度とは、認知症など判断能力の不十分がゆえ、

不利益が生じている人に対して支援者を付けてもらう制度です。

 

その支援者を「成年後見人」と呼び、活用するには

家庭裁判所に申立てが必要になります。

 

もともと認知症高齢者のためにできた制度ですが、

知的障害・精神障害など幅広い人たちが利用しています。

 

しかし、問題点が2つあるんです。

 

1つ目は圧倒的に成年後見を利用している人が少ないこと

 

最新の裁判所データ(平成30年版)だと、

成年後見の立件件数は約35000件しかありません。

 

需要は確実に増えているにも関わらず、

十分利用されていない現状があるんです。

 

なので、2016年に成年後見制度利用促進法が成立し、

現在は厚生省が中心に普及を進めています。

 

しかし、成年後見は使いづらく、費用も掛かるため

なかなか上手くいかないようです。

 

2つ目は、介護保険の契約のために成年後見制度は

ほとんど活用されていないことです。

 

もともと成年後見制度のルーツは認知症高齢者の

介護保険契約を援助するために設けられたもの。

 

しかし、成年後見の大半は預貯金等の管理・解約などの

財産を守るために使われており、本人の意思決定を支援する

活用は少ない状態にあります。

 

まとめ

 

認知症患者が持っている金融財産は143兆円

 

そして、認知症患者数は400万人を超え、軽度の認知症を含めると

900万人を超える勢いです。

 

高齢化に向かう日本で、

判断能力が不十分な認知症の人が金融財産を守る制度として

成年後見制度があります。

 

誕生のきっかけは2000年の介護保険制度で、

利用者本人がサービスを決める契約制度へ切り替わったためです。

 

成年後見制度とは、認知症など判断能力の不十分がゆえ、

不利益が生じている人に対して支援者を付けてもらう制度ですが・・・

 

現在、利用者は少なく、特に介護保険の契約のために成年後見制度は

ほとんど活用されていません。

 

今後、成年後見における意思決定支援を

どう拡大していくのかが大切なポイントだと思われます。