はじめに
以前、ソーシャルワークを理解するために、
リッチモンドとアダムスを紹介しました。
social-walfare-work.hatenablog.com
そして、彼女らが活躍した時代にあった
COS(慈善組織協会)という組織もソーシャルワークの起源に大きく
関わっています。
また、平成28年の社会福祉士の試験でも
COSについて取り上げていますので、
これを機会にソーシャルワークの歴史や意義をおさえましょう。
COS(慈善組織協会)とは
COSは"charity organization society"の略です。
1869年、イギリス・ロンドンで誕生しました。
19世紀のイギリスは資本主義が発展する一方で、
国民の貧富の差が拡大し、貧困問題が深刻になっていました。
もちろん、貧困に苦しむ人たちに個々で慈善活動をしてましたが、
援助が特定の場所に集中して、必要な人に届かないことがありました。
なので、COSは今までバラバラで行われていた援助活動を
多くの慈善団体に連絡・調整し、まとめることで、漏れがなく支援が広く行きわたるようにしました。
そのため、COSは「コミュニティワーク」の
さきがけとなる組織といわれています。
ちなみに、コミュニティワークは以下の記事で紹介しています。参考まで。
social-walfare-work.hatenablog.com
COSの「友愛訪問員」が今日におけるソーシャルワークの基盤になる。
COSはさまざまな慈善団体を連絡・調整する役割だけでなく、
貧困に苦しむ一人一人に向けた支援にも
力を注いでいました。
COSは「友愛訪問員」(friendly visitor)と呼ばれる
ボランティアを募り、家庭へ個別に訪問する活動を
行いました。これがケースワーカーの根源とされています。
そして、COSの活動は海外まで波及し、
1877年にアメリカのニューヨーク州
バッファローに誕生したのをきっかけに
アメリカ全土にも広がっていきます。
1900年代ごろには今まで培ってきた「友愛訪問員」のノウハウをまとめ、
それを教育することで、プロを育成(専門化)する動きが出てくるようになります。
※補足ですが、第29回(平成28年度)社会福祉士の試験<問題93>では
「友愛訪問員」のノウハウをまとめることを試験では
「科学化」と難しい言葉を使っています。解釈は、
そのノウハウを言葉にして、学問にするイメージでいいと思います。
これがソーシャルワークの始まりとも言われ、その専門化に大きく貢献したのが、
アメリカでCOSの職員として働いていた
リッチモンドでした。
リッチモンドは1917年に『社会診断』(Social diagnosis)
『ソーシャル・ケースワークとは何か』(What is Social Case work)
を著し、ソーシャルワークの実践における専門化を追究していきました。
まとめ
COSは多くの慈善団体を連絡・調整する役割だけでなく、
「友愛訪問員」という個別支援という役割を担っていました。
そして、COSはアメリカにも広がり、
友愛訪問員の活動で得た実践を学問にする(=科学化する)ことで、
専門化を進めます。特に専門化に貢献したのはリッチモンドでした。
さらに理解を進めたい人には
この本を読んでみるといいですよ。
cosの説明は全くありませんが、
19世紀における貧困について詳しく分析しているので、
ソーシャルワークの歴史を理解するのにとても役立ちますよ。